こんにちは、宮中です。
日々、臨床の中で多くの方の身体の不調に向き合わせて頂いていますが、患者様から学ぶことも多々あります。そこで先日、「旅行先で歩いていると、右母趾の付け根が痛くなる」「足全体がすぐに疲れてしまう」というお悩みで来院されたT様のケースについて、皆さんと共有していきたいと思います。

このケースについては普段の生活では短い距離を歩いては止まり、車での移動が中心だったりすると、ご自身の歩行の癖や小さなエラーになかなか気づくことはありません。しかし、旅行などでお出かけした際に「連続歩行」の機会が増えた途端、普段は見えてこないウィークポイントや、身体の悪い癖への負担が一気に蓄積し、痛みや強い疲労感として表面化してくるケースになります。

そこで当院のGaitviewを使って足圧分布・歩行分析評価を実施したところ、ご本人が全く気づいていなかった「驚きの歩行の真実」が隠されていました。

 

1. 測定データが暴く「右内側を潰す」特殊な歩行エラー

T様のGaitviewデータを詳細に分析すると、非常に特異的な傾向が浮かび上がってきました。
まずは、右足の圧が強く、接地時間が短い

次に、右足の「踵の内側」に強い圧がかかっている

そして、足の母趾の付け根(第1中足骨周辺)に強い負担が集中している

通常、私たちが歩くときは「かかとから優しく着地し(ヒールコンタクト)、足首を転がして前に進む」という自然な重心移動を描きます。しかし、T様の場合、本来あるべき最初の接地クッションが機能せず、短い時間の中に強い衝撃と高い圧力が凝縮されている状態でした。

T様の足圧分布データ(左図:静止測定、右図:歩行測定)。右足の踵内側や母趾の付け根に強い圧力が偏っているのが分かります。
さらに決定的なのが、その「歩行軌道の順序(右図)」です。 通常とは異なり、「フォアフット(前足部)から接地し、ミッドスタンス、フットフラットを経て、最後に踵が落ちる」という、重心軌道線自体が通常とは異なる異例のフォアフット歩行パターンになっていました。肉眼で見ても内股傾向な歩き方になっていましたね。この右内側部を潰すような無理な体重移動が、日常よりも長い距離を歩いた旅行先で、母趾の付け根の痛みや足の慢性疲労を引き起こしていたのです。

 

2. なぜ、その歩き方になってしまうのか?(過回内と柔軟性の制限)
「なぜ、かかとではなく前足部から接地し、内側を潰すような歩き方になってしまうのか?」
その背景には、大きく分けて2つの要因があります。

・足首の不安定性(過回内)からの防衛反応
歩くときに足が内側に過剰に倒れ込む(回内)傾向があると、足元が非常に不安定になります。身体は無意識のうちに、その不安定さから逃れるために「足首を固め、前足部でガチッと着地して不安定な時間をスキップしよう」とします。

・ 下肢全体の柔軟性低下と関節の制限
足首(足関節)や股関節まわりの柔軟性が低下していると、物理的に「かかとから着いてスムーズに前に転がる」ことができなくなります。その結果、代償動作として特異なフォアフット歩行が定着してしまいます。
この状態を放置すると、旅行や日常のちょっとしたお出かけのたびに足の痛みが再発し、膝や腰への慢性的な負担へと繋がっていきかねません。

・ ヒール高な靴を履いている期間が長かった
長くヒール高な靴を履いて仕事をしていたこともあり、足部安定を図るため独自の歩き方に影響が出てきたのではないかと考えます。まあ、歩き方についてはモデルなど特殊な仕事を除けば一般に学ぶ事はありませんので。

 

3.当院が目指す「インソール + 徒手 + トレーニング」の統合アプローチ
・こうした崩れた歩行や足部環境を根本から改善するためには、「痛いところをマッサージする」「市販のクッションを入れる」だけでは不十分です。当院では、以下の三位一体のアプローチで解決を図ります。

・インソールと靴選びによる「無意識の環境適正化(受動的アプローチ)」
人間は、一日に何千歩も歩く中で「正しい歩き方を常に意識し続ける」ことは不可能です。だからこそ、毎日使う靴とインソールの環境を変える必要があります。T様の足元に対しても、ヒールカップでかかとを直立に保ち、崩れたアーチを適切に支えるインソールを設計します。これにより、日々の無意識の歩行の中で「正しい関節の軌道」が強制され、足底のセンサーを介した筋再教育が自然と行われます。

・徒手療法による「下肢全体の柔軟性アップ(他動的アプローチ)」
インソールの効果を最大限に引き出すためには、土台となる関節や筋肉がなめらかに動く必要があります。足首の硬さや足部の細かい関節のモビリティを徒手にて解放し、下肢全体の連動性を高めます。

・ トレーニングによる「神経筋再教育(能動的アプローチ)」
支えるだけでは不十分な筋機能に対しては、必要なトレーニングやバランス練習をプラスします。これにより、エラーの起きない身体へと根本からアップデートしていきます。

最後に・・・
今回ご紹介したT様のように、歩行分析(Gaitview)を用いることで、「自分では気づけないフォアフット接地や、通常とは異なる重心軌道の癖」を正確に見つけ出すことができます。ランニングなどの短い時間であればフォアフット、フットフラットなども全然問題ありませんが、長い時間歩くとなると前足部接地は体を支える上では踵接地に比べ強固なものではなく、むしろ足部や体への負担増となる歩きになっていることが今回の測定も参考に知ることとなりました。

原因がわかれば、適切な環境とケアを施すことで身体は確実に応えてくれます。
あなたの歩き方が無意識レベルで良くも悪くも自覚症状の問題に寄与していると考えると、定期的な健康診断のように足の健康にも今後目を向けていくことがQOL高い生活を送ることができるのではないでしょうか。

当院では足の評価や相談のみでも承っておりますので、ご予約やご相談は、公式LINEやお電話よりお問合せ下さい。